戦が彼の人生だった
英雄・丈夫(ますらお)・救世主
人々彼を褒めちぎる

しかして、戦士の行く末は
戦無ければ暴れ者
人々からは弾かれる

そんな彼にも友がいた
友は戦士を心配し、声掛け励まし嗜(たしな)めた
それでも、戦士は無感動

声を掛けてた友ですら、いつしか呆れ袂を分かつ
戦士は更に落胆し、友よお前も同じだと
全てのモノに毒を吐く

ああ悲しきは力あるもの
民衆は常に冷淡で、出る杭は打たるるさだめか



それは詩人の物語
それはある月ある日の話し
詩人は町にやって来た

詩人は大層やつれていたが、自慢の喉は健在だった
町のはずれの小さな広場、詩人は歌う恋の歌
居心地が良く長居をしたが、そろそろ行こうと思ったときに
一人の少女が声かける

少女は詩人の歌う詩が、己の事だと勘違い
それでも詩人は喜んだ、この娘こそわが伴侶
共に歩める無二の人

詩人は町に居残った
されど詩人の歌声は、流浪の身なれば輝けり
一つ処に腰据えて、詩人は我が身を失った

個を失いし詩人の声は、少女の耳には届かない
ああ哀れなり詩人の恋
詩人は一人旅に出る

JANK,S氏のHPでの6666ヒット記念に頂いたものです。
「超短編でいいから、ふぁんたぢぃな話を…」とのリクエストに、
忙しい中、2篇の詩を書いてくれました。
「吟遊詩人の唄」として読んでいただけるとよろしいかと。

何と言いますか…こういう話、ダメなんですよ…。
切ないじゃないですか。ついつい、「うっ…」ときてしまうんですね。
特に人間関係で嫌なこととかあって落ち込んだ時に読むと、
素直に泣けるかもしれない。

「本当の自分」って何だろう。「友達」って何だろう。「恋人」って何だろう。
ふと、そんなことを考えてしまいます。
人間というのは、何と身勝手な生き物か、と。
「自分の本当の姿」なんてものは、もしかしたら、たとえどんなに親しくても、
本当は誰にも理解されるはずのないものなのかもしれません。


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