君のために 〜あるいは、調理場の風景〜

  チャットネタ第1弾:肉じゃが

注:この話は、某なりきりチャットにてなされた会話を元に作られています。あんまり深く考えないでください(笑) ちなみに、チャットで語られなかった部分であります。 チャットで勝手にでっち上がったセリフの裏にあったこと、ということで。しかし…何故に肉じゃが…。そんなわけで、タイトルはシリアスですが、中身はギャグです(笑)

「…失敗、かな…」
 カミューは、ぼそりと呟いた。ちなみに、ここは調理場である。調理場で何をしているかと言えば、当然、料理をしているのである。何千人という騎士団の頂点に立っていた男が鎧ではなく白い前掛けを着け、 戦場で敵とではなく調理場で食材と格闘するなど、常識としては誰も考えまい。
「どうしたヨーー?」
「ハイ・ヨー殿…せっかくご協力いただいたのに、失敗のようです…」
 ちなみに、作っていた物はと言えば、肉じゃがである。城内でたまたま盟主の少年と会い、話をしているうちに料理の話題になり、肉じゃがのレシピをもらったのだ。
 カミューがそのレシピを持って調理場に現れたのは、だいぶ夜も更けてからのことだった。肉じゃがを作りたいから調理場を使わせてほしい、と言い出した元赤騎士団長に、さすがにハイ・ヨーも驚いたが、 どのみちその日の営業は終了していたので、いろいろとアドバイスをしてやっていたのだ。
「うーん…ちょっと甘いけど、大丈夫ヨーー。美味しくできてるヨーー」
 もともと、カミューは料理というものはあまり得意ではない。必要に迫られ、自分で作るには作っていたこともあるが、それは「とりあえず食べられればいい」という類いのもので、 「家庭的な暖かさ」とはかけ離れたものだった。まして、騎士団に入ってからは、戦場に出れば食事とは栄養と体力の補給が主目的であり、味などは二の次だったのだ。
 それでも、実際、ハイ・ヨーの言う通り、多少甘口ではあるが、見た目も味も、申し分ないものが出来上がってはいた。だが、カミューはそれでは気に入らないようである。
「食べる人間が問題でして。甘過ぎるのです、これでは」
「食べる人間? あの青騎士さんかヨーー?」
「ええ、まあ…」
 やはり、あそこで砂糖を足したのは失敗だった。あまりに味が物足りないかと思って少しばかり足そうとしたのだが、目測を誤ったらしい。
「料理に大切なのは、食べる人のために心をこめることヨーー。その点は大丈夫ヨーー。ワタシが保証するヨーー」
「ありがとうございます。ですが、やはり…」
 カミューの脳裏に、「作ってみる」と言っただけで子供のように目を輝かせて喜んでいたマイクロトフの顔がよぎる。それほどまでに期待してくれているのかと思うと…。
「…ダメなのかヨーー……」
「えぇ…やはり、自分で納得したものを出してやりたいのです」
「そのこだわりはわかるヨーー」
 ハイ・ヨーとて、プロの料理人。自分で「旨い」と納得できないものをメニューに並べるのは、プロとしての誇りが許さない。だがとりあえず、カミューはプロの料理人ではない。 しかも相手があの青騎士なら、多少の失敗も「愛」と受け取るのではないか?
「でも、とりあえず、持っていってあげたらいいヨーー。きっと待ってるヨーー」
「…そうですね…。ハイ・ヨー殿、お騒がせをいたしました。ありがとうございます」
 そう言って、カミューは出来上がった少々甘口の肉じゃがを持って行った。

 数日後、カミューはまた夜遅くに調理場を訪れた。
「ハイ・ヨー殿…」
「おや、カミューさんかヨーー。どうしたヨーー?」
「…申し訳ありませんが、また、調理場を使わせていただけますか?」
「別にかまわないけど…今度は何を作るかヨーー?」
「もう一度、肉じゃがを…」
 数日前のことをよく覚えていたハイ・ヨーは、怪訝そうな顔をした。
「…喜んでくれなかったのかヨーー?」
「いえ、喜んではくれたのですが…やはり甘過ぎたようで」
 嘘のつけない人ですから、と苦笑したカミューに、ハイ・ヨーは何かを察したようだった。
「わかったヨーー。それなら、気の済むまで作るといいヨーー」
「ありがとうございます」

 そして数刻後、カミューは出来上がった肉じゃがを、今度は上機嫌で相棒の元へ持って行った。それを見送りながら、ハイ・ヨーの顔には自然と笑みがこぼれた。
 料理は、食べる人を思って作るもの。心がこもってさえいれば、多少の失敗も極上の調味料となりうるものだ。それは、ハイ・ヨー自身、同盟軍に居座り料理を作っていったことで初めて、心の底から実感したことだった。
 あの青騎士は、多少甘過ぎる肉じゃがでも、喜んで食べたのだろう。だが、それを納得できなったのは、作ったカミューの方の相手を思うが故のこだわりで。それだけに、マイクロトフにとっては、どちらも違った美味しさとして感じられるに違いない。
「…心をこめた料理を作ってくれる人がいることも、心をこめて料理を作る相手がいることも、幸せなことだヨーー…」

ここで作者ははた、と気付く。実は主役はハイ・ヨーだった!!(笑) あぅー。
ところで、私は、はっきり言って料理は全くできません。…カレーくらいなら作れるかな…。肉じゃが…高校の家庭科で作ったきりだなぁ…。その調理実習の時、私の大嫌いな豚肉でやらされたんですが…あなたは、 牛派? 豚派? これを一通り書いた翌日に、ゲームの料理勝負でハイ・ヨーが全く同じようなことを言ったのにはびっくりしましたよ…。
だいたい、誰の小説を見ても、カミューさんにもひとつくらい苦手なもの…と言うか弱点があったりしますが(カナヅチ、ってのもあったなぁ…)、 どうやらウチのは料理らしいです(笑) でも、私が思うに、自分で「下手」って思ってるだけですね、この人は。
つか…何でハイ・ヨーまで2人の関係を知ってんねん(笑) そんなに有名なのか(笑)

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