巡る時:その1

病院の待合室。隣にいた男も、猫を胸に抱いていた。フミとは対照的な、真っ白な猫。だいぶ衰弱しているのは、傍目にもわかる。
「ずいぶん、衰弱していますね」
自然に言葉が出ていた。いきなり声をかけられ、男は驚いたようだったが、丁寧に返事を返してくれた。
「ええ…一昨日拾ったのですが…餌を全く食べてくれなくて」
「そうですか…それは心配ですね…。うちのも、一週間前に拾ったのですが…病気になりましてね。もしかしたら、元々何か病気を持っていたのかもしれません」
その時だった。
「みゃ〜〜」
ぐったりとしていたフミが、いきなり鳴き出した。
「みゃ〜、にゃ〜〜」
「こら、どうしたんだ」
しかし、一向に鳴きやむ気配はない。隣の白い猫に向かって、必死に呼びかけているようにも見える。
「す、すみません。こら、フミ!」
その時、やはりそれまでぐったりしているだけだった白猫も、目を開けて鳴き始めた。
知り合いなのでしょうか…」
互いの飼い主は、途方に暮れるしかない。
しばらくそうしているうちに、彼は先に呼ばれて診察室に入っていった。
猫は…まるで引き裂かれる恋人のように、泣き続けていた。

病院の待合室で順番を待っていると、黒い猫を抱いた青年が隣にやってきた。病気なのだろうか。苦しそうに見える。
「ずいぶん、衰弱していますね」
いきなり青年に声をかけられた。驚いたが、悪い印象はない。自然に返事を返していた。
「ええ…一昨日拾ったのですが…餌を全く食べてくれなくて…」
「そうですか…それは心配ですね…。うちのも、一週間前に拾ったのですが…病気になりましてね。もしかしたら、元々何か病気を持っていたのかもしれません」
その時だった。
「みゃ〜」
青年の腕でぐったりとしていた黒猫が、いきなり鳴き出した。
「みゃ〜、にゃ〜〜」
「こら、どうしたんだ」
青年が宥めようとするが、一向に鳴きやむ気配はない。むしろ…ユキに向かって何事かを言おうとしているようにさえ見える。
「す、すみません。こら、フミ!」
いえ、お気になさらず、と言おうとしたその時、やはりぐったりしているだけだったユキまでが鳴き始めた。
「…知り合いなのでしょうか…」
どうしていいのかわからず、そんな言葉しか出てこない。
しばらくそうしているうちに、診察室に呼ばれた。
必死で呼びかけているらしい猫同士が、妙に印象的だった。



(ダンスニー! ダンスニーではありませんの!?)
黒猫は、隣の白猫に向かって、必死で呼びかけていた。
だいぶ衰弱していたようだが、何とか目を開けてこちらに反応してくれた。
(ユ…ユーライア…か?)
(やっぱり…! ダンスニーですのね…!!)
(ユーライア…まさか、こんなところで会えるなんて……)
互いの飼い主が必死で宥めようとするが、そんなものは耳に入らない。
それどころか、2匹は、それぞれの飼い主にも必死で訴えかけていた。
(カミュー様! お気付きになりませんの!? 彼は…彼は……!!)
(マイクロトフ! わからないのかよ! あいつは…アンタがあんなに…!!)
しかし、所詮は猫の言葉。通じるはずなどなく。
ほどなく、白猫は診察室に呼ばれていった。

思わず、ユーライアとダンスニーまで転生してしまいました(笑) いえ…某なりきりチャットで、この2振りを擬人化させてしまってたりするもんで、つい……。

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