フミの診察を終え、診察室を出ると、白猫を抱いた男がまだそこにいた。とっくに帰っていていいはずなのに…何かあったのだろうか? 「こいつが…帰りたがらなくて」 弱り切ったように言う彼の腕には、澄みきった青空を思わせる瞳でじっとこちらを見つめる白い猫。 その姿を見て、またフミが鳴き出した。 先に診察を終えたのに、ユキが帰りたがらず、仕方なく、そこで待っていた。病院を出ようとすると、中へ向かって激しく鳴き出すのだ。 しばらく待っていたら、黒猫の青年が出てきた。俺がまだいることに、驚いたようだ。当たり前だ。 「こいつが…帰りたがらなくて」 まるで、下手な言い訳のようだ。 また黒猫が鳴き出した。 翌日に会う約束をした。猫同士が離れたがらないらしい…などと、まるで下手な誘い文句のようだ。今時、三流の恋愛ドラマでも、そんなことは言わないだろう。 だが、そう思ったのはどうやら相手も同じらしかった。 「それでは、また明日」 「ああ…また明日」 |
ちょっと短いですが、話の都合上、仕方なく。 ここまでは序章です。えぇ、ここからです。本題は。ここから一気にいきます。…多分。 |