巡る時:その4

待ち合わせた公園のベンチで、猫がじゃれるのを見ながら、また他愛もない会話を交わす。互いの名前や、住んでいるところ、仕事のこと…。
「そう言えば、今朝は妙な夢を見ましたよ」
何となく、話のタネに、夢の話をしてみたくなった。
「ほう、どんな?」
彼も興味を示してくれたらしい。
「自分が死ぬ夢です。いくら縁起がいいとは言っても…やはり、あまり気持ちのいいものではありませんね」
「それは…奇遇ですね。俺も今朝、自分が死ぬ夢を見ました」
「…え?」
「死を目の前にして、誰かを捜していたんです。その人を見つけるまでは、絶対に死ねない、と…」
何だ、それは。まるで今朝俺が見た夢とそっくりではないか。
「そして何とかその人を捜し出し、手を取り合って力尽きたようなのですが…」
「もしかして、その相手が男だったとか?」
「…何故、それを?」
…これは一体、どういうことだ? 俺と彼とは、全く同じ夢を見ていたというのか?

待ち合わせた公園のベンチに座り、他愛もない話をしながら、じゃれ合う猫を眺めていた。この時初めて、彼の名前を知った。仕事や、住んでいる場所も。
「そう言えば、今朝は妙な夢を見ましたよ」
苦笑するように、彼が呟いた。
「ほう、どうんな?」
何となく、彼自身に興味が出てきた。もっといろいろ知ってみたい。
「自分が死ぬ夢です。いくら縁起がいいとは言っても…やはり、あまり気持ちのいいものではありませんね」
驚いた。同じような夢を見ていたとは…。自分の夢の話もしてみたくなった。
「それは…奇遇ですね。俺も今朝、自分が死ぬ夢を見ました」
「…え?」
彼も、驚いたようだ。
「死を目の前にして、誰かを捜していたんです。その人を見つけるまでは、絶対に死ねない、と…」
夢の中の自分にとって、とても大切な人だったらしいが…。だが、しかし…。
「そして何とかその人を捜し出し、手を取り合って力尽きたようなのですが…」
「もしかして、その相手が男だったとか?」
一瞬、言葉が出てこなかった。何故いきなりそんなことを言うのだろう? まるで、夢の内容を知っているみたいではないか。
「…何故、それを?」
彼も、茫然としている。まさか、彼も全く同じ夢を見ていたとでも言うのだろうか?



(カミュー様…マイクロトフ様…まだ、お気付きになりませんのね…)
(仕方ないさ…。しばらくは、オレ達があの2人を引き合わせておくしかないだろう…)
(せっかく…せっかく、巡り合いましたのに……)
猫たちの呟きは、誰にも聞こえない。

全く同じ夢を見る。その夢の意味するところは何なのか。
こういう時、人間って鈍いですね(笑) 一生懸命じゃれて2人を引き合わせておこうとする猫たちが健気です。うん。(笑)

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